澤庵宗彭

人の人を思ふ、心をつけて見れば、実に人を思ふにはあらず、(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚「東海夜話」より抜き書きしました。「他のためを思って」という名目でなされる行為も、その実はエゴイズムを基礎にしているのだと喝破します。さらに、親が子を思うことと仏祖が衆生を思うことの違いを対照させて、仏恩の尊さを強調します。 一、人…

君子は人をそしること、(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚「東海夜話」より抜き書き。君子たるものは人の誹謗にいちいち怒るなと説いています。誹謗を忍んで言論の自由を尊重することで、ためになる言葉(良言)が自分に達するのだと。出典から前二節も読んでいただければと思います。 一、君子は人をそしる…

人として人のためよかれのと思ふこと、誠にかたいかな。(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚「東海夜話」からの抜き書きです。 一、人として人のためよかれと思ふこと、誠にかたいかな。凡そ生としいける者、あらそはずと云ふことなし。空をかける翅(つばさ)、地をはしる獣、螻蟻蚊虻(けら・あり・か・あぶ)にいたるまで、あらそはずと云…

世俗佛法をば寂にして滅絶すとおもへり、道はもと生滅なし。(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。無常偈(諸行無常・是生滅法・生滅滅已・寂滅為楽)の解説です。 一、世俗佛法をば寂にして滅絶すとおもへり、道はもと生滅なし。然るを衆生、生滅の相となりて、悟るときは則ち生滅の二つともめつして寂滅の體現前す、これをた…

心に城郭を搆ふべし、心の城郭は人破りがたし。(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。紫衣事件に連座し幕府権力の弾圧を受けても屈しなかった沢庵の気概が伝わってくる一節です。 一、沙門(しやもん)の言行正しきときは、則ち権威とても恐れ無し。私を以て沙門に傷つくるときは、則ち我に恥無し、その恥は権(権…

人みな我飢を知りて人の飢を知らず、(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。自己中心性に囚われた状態こそ放逸(パマーダ,気づきのないこと)に他ならないと述べています。 一、人みな我飢を知りて人の飢を知らず、ゆゑに人を憐むの心なし。我飢を知りてはなんぞ人を憐まざらん。放逸の人はたゞわれを知…

生死即涅槃、煩悩即菩提、迷悟不二(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。当時の禅者が陥っていた錯誤を厳しく指弾しています。我々が禅語録などを読む際の注意事項にもなっていると思います。有難いことです。 一、生死即涅槃、煩悩即菩提、迷悟不二とをしふることは、本来空寂にして生死なし、煩悩の…

古書に曰く、「記誦の学は人の師とするにたらず」と云云。(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。自戒としたい言葉ですね。 一、古書に曰く、「記誦(きしょう)の学は人の師とするにたらず」と云云。今の世名を発する者は見たることを能く覚ゆる生れつきを以て、その誦する事良馬の行くがごとく、以て人の耳を驚かす。それ難…

貝甲更らに芳しきものにあらず、臭きを以て能とす。(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。大乗仏教の化身論を薫物と貝がらの喩えで説明した箇所です。 一、薫物(たきもの)に貝甲(かひがら)を入ること、彼の臭きをかりて芳(かぐはし)きを衣小袖にとめるなり。貝甲更らに芳しきものにあらず、臭きを以て能とす。佛…

人のおそろしと思ふは鬼なれど、(沢庵和尚の法語より)

沢庵和尚の「東海夜話」より。 一、人のおそろしと思ふは鬼なれど、目に見えぬと云へば名のみなり。実(げ)におそろしと云ふは只人なり、手足健(すこやか)にして、面に七穴開き、はしたなく弁舌ある人は無を有と云ひなし、天を地とも曲げ、鷺を鴉とも云ひ…

儒道には自然と云ひ佛法には因縁因果と云ふ(沢庵和尚の法語より)

久々に沢庵和尚の「東海夜話」より書写してみた。仏教の因縁因果の教えを分かり易く解説しているくだりです。 一、或人曰、「天地のことは物をこしらへて成すことにあらず、只自然なり、しぜんなるに依りてやすし」と云ふ。我れ此において説いて曰、「何事も…

沢庵和尚、業を語る(3)

月例講演会とテレビの収録(表の日記)。『東海夜話』書写。 (承前)…状に相応の心もたんには如かじ、人と智を輝かせば我も負けじと争ふ、荘生も云ひしごとく、智也者争之器也(智なるものは争いの器なり)と、人高きに処れば、我争て卑(ひく)きに処らん…

沢庵和尚、業を語る(2)

パティパダーの原稿作成,ダンマキャスト編集作業など。『東海夜話』書写。 (承前)この世は夢なり久しかるべからず、財宝多くあつめ持ちて悦ぶといえども、枕の夢に金を得て実の金と思ひ、悦ぶこと限りなけれども、覚める時金にあらざるが如し、夢の中にこ…

沢庵和尚、業を語る(1)

今日はオフ。学芸大でrjミーティングのあと、千駄ヶ谷に寄って散歩。 午後は精舎で原稿作成など。『東海夜話』書写。(也→なり、是→これ など適当に読みやすく修正してます) 一 業とは萬(よろづ)の人のなすわざなり、身三口四意三の名なり、殺生、偸盗、…

人の善行を笑うな!

東海夜話の書写。 一 佛(ほとけ)と成るとは、いかやうの事と云ふぞ、佛は覚(さとり)なり、覚に至るを佛になると云ふなり、されば覚を開くほどの智恵もなき衆生の念佛称名すれば、覚顔の人これを笑ふ、さらにいわれなし、覚を開くほどの智慧なき衆生、念…

我終に寂しきことを知らず

東海夜話の書写はじめ。 我終(つい)に寂しきことを知らず、問ひ来る人の帰ればあら閑(しづ)かなり面白やと思ひ、日暮れば今は早問ふ人もあらじ、我身に成りたりあら閑かやと思ふ、雨も月も閑かなれば我雨我月(わがあめわがつき)よと思はるゝなり、さり…

東海夜話

一時出家中、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで沢庵和尚(澤庵宗彭)の古い全集をみつけて、『東海夜話』(玲瓏随筆となっている)をダウンロードして夜な夜な読んでいた。沢庵和尚、白隠ほどの強烈な覇気は感じないけれど、血なまぐさい戦国の夜…